言葉遣いにも注意しよう
患者が安全に、安心して治療に専念できるようにサポートしたり、必要な指導を行ったりするのが看護師の役割です。しかし、立場や知識の違いから患者との会話にすれ違いが起こることがあります。
なぜ会話のすれ違いが起こるのか
例えば、治療上の理由からベッド上で安静を保ってほしい患者にその旨を伝える際、「ベッド上で安静にしていてください」と伝えただけでは、患者はどうすればいいのか分かりません。看護師同士であれば「ベッド上で安静」の意味はある程度統一されていますが、患者はそうではないため、身動きがまったくとれないのか、ベッド上で起き上がることは可能なのか、と解釈が異なってしまう可能性があります。
このようなすれ違いは普段の業務に慣れてしまっていることが原因です。看護師としての視点ではなく患者の視点に立って説明するように心がけましょう。看護師と患者の認識の違いはこのケース以外にもたくさんあります。場合によっては医療事故につながることもあるため、注意しなければなりません。
すれ違いを防ぐには
看護師と患者のすれ違いを防ぐには、分かりやすいように説明することがポイントです。患者に説明や指導する際は、具体的な数値やかみ砕いた言葉で伝えるようにしましょう。看護師が日常的に遣っている言葉でも、患者には正確に伝わらないものもあるためです。「ベッド上で安静にしてください」よりも「ベッド上で起き上がることは可能ですが、足を下ろしたり、歩いたりはできません」の方がより具体的に伝わります。
過去のインシデント事例やこれまでの経験などから情報伝達のヒントが得られる場合もあります。日頃から注意して観察しておくことで、患者がどんなことに誤解しやすいのかが分かるでしょう。
言葉遣いの問題も
緊張や不安を抱えている患者は普段とは異なる精神状態となっています。看護師は患者がリラックスして治療に専念できるようにコミュニケーションをとる必要がありますが、その際に患者に優しく接するのも有効な方法です。しかし、「優しければいい」というものではありません。「親しみやすいように」という気持ちでタメ口や幼児語で話しかける人がいますが、不愉快に思う患者もいます。特に高齢の患者は精神疾患の一種である「幼児返り」だと誤解されてしまう可能性もあるため注意しましょう。患者との距離感を誤ってしまうと、病院の評判を落とすことにもなりかねません。
親しみやすさを強調するのは悪いことではありませんが、患者やその時の状況に合わせて遣い分けるようにするといいでしょう。場面ごとに細かく遣い分けることが難しい時は、丁寧な言葉遣いを心がけ、声色や話す速度で優しさや親しみやすさを表現しましょう。